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健康経営で取り組む腰痛対策―突然の痛みを招く累積負荷とは

健康経営

2026.08.30

健康経営シリーズ 第2回(全8回)
理学療法士として36年間、働く人の身体と向き合ってきた経験から、企業の健康経営について考える全8回の連載です。

ある日突然の腰痛は、本当に「突然」なのでしょうか

「朝、顔を洗おうとかがんだ瞬間、腰が痛くなった」

「床に落ちた物を拾っただけなのに、動けなくなった」

「いつもと同じ荷物を持ち上げただけなのに、腰を痛めた」

理学療法士として働いていた頃、このようなお話を何度も聞きました。

ご本人にしてみれば、腰痛は突然起きたものです。

ただ、身体の状態や普段の仕事について詳しく聞いていくと、痛みが出たその瞬間だけでは説明できないことが少なくありませんでした。

痛みが出るまでの間に、身体には小さな負担が積み重なっていたのです。

最後に持った荷物だけが原因とは限らない

少し前かがみになる。身体をひねって物を取る。長時間、同じ姿勢で座る。休憩を取らずに立ち続ける。

一度だけなら、身体は耐えられるでしょう。

しかし、それが毎日続けば、身体が十分に回復しないまま、次の負担を受けることになります。

私は患者さんに、「コップに水が少しずつたまっていくようなものです」と説明することがありました。

コップに余裕があるうちは、痛みを感じないこともあります。ところが、負担が積み重なりコップがいっぱいになると、最後の一滴で水があふれます。

その一滴が、顔を洗う動作や、床の物を拾う動作だったのかもしれません。

最後の動作だけを見ても、根本的な解決にはなりません。その人の身体に、それまで何が積み重なっていたのかを見る必要があります。

「悪い姿勢」より、同じ姿勢が続くこと

腰痛の話になると、よく「姿勢が悪いから」と言われます。

もちろん、前かがみや中腰、腰をひねった状態など、腰に大きな負担がかかる姿勢はあります。

しかし、見た目にきれいな姿勢でも、それを長時間続ければ身体は疲れます。

問題は、単純に姿勢がよいか悪いかだけではありません。

同じ場所に負担が集中していないか。姿勢を変えられる仕事になっているか。疲れたときに短い休憩を取れるか。

身体に必要なのは、一つの完璧な姿勢を守り続けることではなく、適度に姿勢を変えることです。

腰に負担がかかるのは、重量物を扱う仕事だけではない

デスクワークにも腰への負担があります。

パソコンの画面が身体の正面にない。椅子と机の高さが合わない。足元に荷物があり、窮屈な姿勢になっている。忙しくて何時間も席を立たない。

立ち仕事でも、作業台が低い、商品を取るたびに身体を同じ方向へひねる、人手が足りず腰を下ろす時間がない、といった負担があります。

一つだけを見れば大きな問題には見えなくても、小さな負担が同じ人の同じ場所に集中すれば、不調につながる可能性があります。

本人に体操を勧めるだけで十分でしょうか

ストレッチや体操を取り入れることは大切です。

ただし、作業台の高さが合っていない状態で一日中仕事をして、終業前に数分間ストレッチをしても、翌日はまた同じ負担がかかります。

本人の身体を整えることと、身体に負担をかけている環境を見直すこと。

腰痛を予防するには、その両方が必要です。

厚生労働省の指針でも、腰痛には複数の要因が関係するため、作業方法、作業環境、健康管理、教育などを総合的、継続的に進めることが示されています。

まず、仕事をしている姿を見る

企業が腰痛対策を始めるとき、最初から大がかりな設備を導入する必要はありません。

まずは、従業員が実際に仕事をしているところを見ます。

前かがみになっていないか。身体をひねる動作を繰り返していないか。物を取る位置が遠すぎないか。一人だけに負担の大きな仕事が集中していないか。

そして、本人に聞いてみてください。

「どの作業が一番つらいですか」

「何時頃から腰が重くなりますか」

「少し変えてほしい場所はありますか」

毎日の仕事をしている人にしか分からない負担があります。

まだ仕事ができているからと、小さな身体のサインを見過ごさないこと。

その気づきが、従業員の身体と会社の大切な人材を守る第一歩になります。

次回は、「ストレッチだけでは職場の腰痛が減らない理由」を考えます。

※強い痛み、脚のしびれや力の入りにくさ、発熱、排尿・排便の異常などがある場合は、自己判断せず医療機関へご相談ください。

参考資料:

この記事を書いた人

理学療法士として36年間、大学病院、整形外科病院、整形外科クリニックに勤務。骨・筋肉・関節などの運動器疾患を専門とし、腰痛、肩や膝の痛み、けがや手術後のリハビリテーション、職場復帰などに携わってきました。

クリニックでは、身体の痛みに加えて、不安や気分の落ち込み、職場の人間関係などの悩みを抱える方にも数多く対応。身体だけでなく、仕事の環境や心の状態も含めて考えることの大切さを実感してきました。

現在は北海道・札幌市を中心に、これまでの臨床経験を生かし、働く人の身体づくりと企業の健康経営を支援しています。

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従業員の腰痛や身体の不調が気になっているものの、何から確認すればよいか分からない。そのような企業様に対し、北海道・札幌市を中心に、理学療法士としての臨床経験を生かした健康経営と職場環境改善を支援しています。

実際の仕事や職場環境を確認しながら、無理なく始められる改善方法を一緒に考えます。

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